林田学さんが解説!陶磁器と陶器の違い
普段家で使っている食器が全てガラス製であったりプラスチック製であったりするご家庭は少ないでしょう。何らかの食器は必ず石から出来ているものがあるはずです。ではこのようなお皿をパッとみて、普段私達はなんと言っているでしょうか。道路に面したお店や焼き物、瀬戸物などの市に出向き、「あ、陶器買う?」といったように意識せずに口にしてはいないでしょうか。実は陶磁器と陶器は、似ているようで全く違うものなのです。特に焼き物に詳しいわけでなくても慣れれば見分けは簡単につきますし、見分けがつくようになってきたら焼き物というのは奥が深くて面白く感じる方が多い世界ですから、是非陶磁器と陶器の違いを覚えて下さい。陶磁器は簡単に磁器と呼びますが、磁器と陶器はそれぞれに特徴がありますので、それを知って扱うと壊してしまうようなことも少なくなります。
そもそもこの二つは違いは並べて比べるとよく判ります。まずは磁器。原料は陶石、長石、珪石です。焼く温度は1200度から1400度の間で、吸水性がなくて光を透過させることが出来ます。呼称は石で作られるので「石もの」です。主なやきものの名前として知られているのは、有田焼、九谷焼、砥部焼、波佐見焼などです。そして陶器。原料は陶土、長石、珪石。焼く温度は800度から1200度までで少し吸水性があって光は透過しません。呼称は粘土で作られているので「土もの」です。主なやきものの名前として知られているのは、瀬戸焼、唐津焼、美濃焼、常滑焼、信楽焼、萩焼、笠間焼です。つまり原材料が磁器は石で陶器は土ですし、焼くときの温度がかなり違っています。
高台を見て判断するのが一番簡単な見分け方だと林田学さんは言う
そして見分け方ですが、これは高台を見て判断するのが一番簡単な方法だと林田 学は言っています。焼き物のお椀をくるりと後へひっくり返したときに、机に直接触れる箇所に段を作って中身の熱さを伝えないようにしている所がありますが、あそこを高台(こうだい)と呼びます。そこが白いと大体は磁器となります。これは原材料である陶石の色の白さが特徴として出ているからです。しかし陶土によってはかなり白っぽいものもありますから、高台の色の白さだけでは判らない場合は手触りで確認しましょう。触れてざらざらしている場合には陶器で、しっとりとなめらかな感触であれば磁器になります。お皿やお椀をひっくり返して後のぼこっと出たところを見て、茶色だったら陶器、白色をしていてもさわり心地がざらざらしていたら陶器、白い色をしていてつるつると滑らかであれば磁器ということになるのです。また色の違いもよくみるとすぐに判ります。
磁器の白は透明感のある白で、白っぽい陶土を使ったときのようなべったりと重い白色ではありませんから、見慣れるとすぐにわかるようになります。そして一番は手で触ることですが、触れたときの滑らかさは全然違いますので一度は比べてみましょう。また、高台の色とさわり心地以外の他のポイントもあります。パッと見て、薄手のものは磁器であるということです。磁器の方が石が原材料ですから硬度が高いため、薄手に作ることが出来るのです。勿論使用目的や作品として厚手に作られている場合はありますし、砥部焼などは全体的に厚みのある器が特徴でもありますから一概には言えません。しかしこのことから判るように、石が原材料である磁器は薄手のものでも厚手のものでも作ることが可能ですが、土が原材料で硬度が弱い陶器であれば薄く作ることは難しいということになります。ですから、薄いものであれば磁器としてみてまず間違いないでしょう。
林田学さん曰く、薄い磁器は光にかざすと透ける特徴がある
そしてそのような薄い磁器は、光にかざすと透ける特徴があることを覚えておいてください。もし比較をする機会があれば試してみて欲しいのですが、磁器は薄くて硬いため、叩いたときの音がキンという澄んだ高い音がします。陶器では薄いものがあったとしても光を通すことはありませんし、また音も少しくもったような鈍い音がします。そして違いを見分けるポイント3は、釉薬の風合いを見る、です。陶器は釉薬のかけかたで風合いを出すものです。土で出来ているので肌合いが少し荒く、そのために釉薬をかけてもムラになることがよくあります。それが独特の表情となり唯一無二の陶器を作り出すわけです。ムラが出来ることによって見た目だけでなく、持った感じが少しボコボコしているのです。
その一方で磁器はほとんどが綺麗に均一に釉薬をかけるため、ムラであったり垂れであったりの表情がないことがほとんどです。磁器の場合は釉薬のかかり方で風合いを出すというのではなくて、絵付けやそもそもの形の美しさなどで表情を作り出しているのです。
使い方も、ですから陶器と磁器では違って来ます。陶器は吸水性があるために盛り付けた料理の汁やニオイを吸収してしまうため、使う前には30分程度水につけておくことでそれを防げます。磁器にはこの手間は必要ありません。どちらも電子レンジの使用は出来ますが、大切に使っているものであれば使用は控えましょう。また、絵付けなどで金や銀をあしらったものは燃えてしまいますから電子レンジの使用は出来ませんので覚えておきましょう。
最終更新日 2025年5月12日